一人親方を始める際の注意点を、税理士が解説します。
一人親方として独立を考える方は、多くの自由と責任を伴うこの道のりに慎重に取り組む必要があります。税務の観点から、以下の重要なポイントを押さえておくことで、スムーズなスタートを切ることができますので、ひとつひとつ確認していきましょう。
<同シリーズの記事>
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一人親方として事業を開始する場合、まず税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。これは事業を開始した日から1ヶ月以内に行う必要があります。この手続きを怠ると、税務上のトラブルに発展する可能性があるため、忘れずに行いましょう。
青色申告は、帳簿を正確に記帳することで多くの税務上のメリットを享受できる制度です。例えば、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字を翌年以降に繰り越すことが可能になります。青色申告を希望する場合は、「青色申告承認申請書」を開業後2ヶ月以内に提出する必要があります。
一人親方としての収入や支出を正確に管理するためには、日々の取引をきちんと帳簿に記載することが重要です。これには、現金出納帳や売掛金・買掛金台帳、経費帳などが含まれます。青色申告を行う場合は、複式簿記での記帳が求められます。
一定の要件を満たす家族を従業員として雇用する場合、その給与を必要経費として計上することができます。ただし、そのためには「専従者給与の届出」を税務署に提出する必要があります。この届出を出すことで、家族への給与支払いが適切に税務処理され、所得税の節税効果が期待できます。専従者給与を検討する場合は、支払額が適正であること、支払いが実際に行われていることも条件となりますので、注意が必要です。
2023年10月から開始されたインボイス制度では、適格請求書発行事業者として登録することで、取引先に対して消費税額を明示した請求書を発行することができます。インボイス制度への登録は任意ですが、登録することで取引先からの信頼性が向上し、取引の継続がしやすくなる可能性があります。登録を検討する際は、消費税の納税義務が生じることや、帳簿管理の手間が増える点も考慮に入れて判断しましょう。
一人親方としての収入に対しては、所得税や消費税などの税金が課されます。所得税は、年間の総収入から必要経費等を差し引き、さらに各種控除額を差し引いた課税所得に対して課税され、確定申告時に納付します。消費税は、基本的には課税売上高が1,000万円を超えた場合に、その2年後に納税義務が生じます。納税スケジュールを把握し、計画的に資金を準備しておくことが重要です。
一人親方は、労働保険(労災保険)に任意で加入することができます。特に建設業などのリスクが高い職種の場合、労災保険に加入しておくことで、万が一の事故や怪我に備えることができます。
一人親方として独立した場合、健康保険や年金についても自己管理が必要です。国民健康保険や国民年金に加入し、定期的に保険料を納めることで、医療費や老後の生活費を確保することができます。
税務や法務に関する知識は、一人親方として事業をしていくために不可欠です。初めての独立に際しては、税理士などの専門家の助言を積極的に活用することで、リスクを最小限に抑えることができます。
一人親方としての道を歩み始める際には、多くの準備と知識が求められます。税務上の手続きや帳簿の整備、保険の加入など、基本的なポイントを押さえておくことで、安心して事業を展開することができます。これから一人親方として独立を考える皆様が、成功に向けてしっかりと準備を進めていただけることを願っています。
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